研究概要 |
すでに我々は,ラット歯肉由来線維芽細胞培養系にインタ-ロイキンー1β(ILー1β)を添加することにより細胞内にホスホリパ-ゼA_2(PLA_2)が誘導され細胞外に分泌されることを明らかにしたが,平成3年度は,歯周炎の進行と組織の修復に関係が深いといわれている腫瘍壊死因子α(TNFーα)及び腫瘍化増殖因子β(TGFーβ)について歯肉線雑芽細胞のPLA_2活性への影響を検討した。その結果,TNFーαはILー1β同様に細胞内外のPLA_2活性を上昇させるとともに,ILー1βによるPLA_2誘導を相乗的に上昇させた。一方,TGFーβは単独では歯肉線維芽細胞のPLA_2活性に影響しないもの の,ILー1β共存下ではILー1βによる細胞内外のPLA_2活性上昇を有意に減少することが明らかとなった。これらILー1β,TNFーα及びTGFβによるPLA_2活性への影響は,これらサイトカインの歯周病の進行と組織の修復における役割の一致するものであり,歯周炎において炎症性サイトカインは歯肉線維芽細胞に作用しそのPLA_2を促進することにより進行に関与しうることが示唆された。一般に,PLA_2は外分泌型の消化酵素として作用する膵臓型(I型)と,各種炎症反応により内分泌される非膵臓型(II型)が存在することがすでに知られているが,我々は大阪大学医学部分子生理化学教室(岡本光弘教授)より供与されたそれぞれの抗PLA_2抗体を用いて調べたところ,ILー1β及びTNFーαにより誘導された分泌型ホスホリパ-ゼA_2はII型に属することが判明した。以上の結果は,現在投稿中である。(FEBS LETTERS)
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