研究概要 |
歯科医・技工士による歯科材料の鋳造、研磨などの作業中に発生する蒸気・粉塵の吸入による生体障害の可能性を明らかにするために、市販NiCr合金の鋳造時発生するフュ-ムの定量分析とNiCr合金の微粉末のマクロファ-ジに対する細胞毒性について検討した。 1.NiCr合金フュ-ムの分析:高周波遠心鋳造器の上部にエアサプラ-の吸入装置を設置し、合金40gの鋳造中に発生するフュ-ムを10L/分吸入し、ミリポアフィルタ-上に採取した。同フィルタ-を王水に浸漬し、溶出した元素を、フレ-ムレス原子吸光分光光度計(購入備品)で定性定量を行った。フュ-ム中にはNi1.48±0.15,Cr3.02±0.35,Co0.33±0.07,Be2.82±0.41μg/フィルタ-が検出された。NiCr合金組成金属中低融点の金属がフュ-ム中に検出され、特にBe添加NiCr合金からBeが0.034μg/g合金/分と比較的多量に蒸発していることが明かとなった。 2.NiCr合金フュ-ムおよび微粒子の細胞毒性:マウス腹腔よりマクロファ-ジを採取し、培養し、フュ-ムまたは合金微粒子を30〜300μg/ml投与し、1時間培養したのち微粒子の細胞内への貪食をエネルギ-分散型電子顕微鏡EPMAで調べ、また細胞毒性と形態的障害を指標に調べた。無処置群のマクロファ-ジはプラスチック基材上に十分に伸展し、細胞表面には多数の微絨毛を認めた。EPMAによりNi、Crを検出できなかった。合金フュ-ムまたは合金微粒子投与群のマクロファ-ジは萎縮し、球形となり表面の微絨毛は不規則に配列し、部分的に消失していた。EPMA分析により細胞内にはNiおよびCrが検出された。マクロファ-ジは合金微粒子を貪食することにより障害が惹起することが明かとなった。
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