研究概要 |
1)デジタル信号処理による音声分折システムについて 当初計画したケプストラムを変更し,線形予測法によりパワ-スペクトルを求めた。すなわち,音声を時定数0.003s,低域通過フィルタ10kHzにて生体増幅アンプを通過させ,シグナルプロセッサ7T18Aを用いて,サンプリング周波数10kHzにて量子化した。定状区間50msを対象に12次の自己相関法に基づく線形予測法にてパワ-スペクトルを求めた。ピ-クの検出を容易にするため,スペクトルの最小二乗直線を計算し,スペクトルの傾きを除去した後、三次微分を行い仮のピ-クを求めた。さらにピ-クの近傍において二次式による内挿法を行い,フォルマント周波数を自動認識させた。本システムの自動認識率は91.6%であった。 2)日本語母親のフォルマント周波数分析 システム開発の第一段階として母音のフォルマント周波数を自動認識した後,F1ーF2平面にプロットさせるプログラムを作製し,健常者102名の母音についての標準的パラメ-タ値を求めた。その結果,母音間に一部重なりはあるが,各母音に特徴的な棄却楕円(棄却率5%)が描かれ,本システムの有用性が示された。 3)上顎欠損症例の音声の特徴 健常者に比較し,上顎欠損患者の母音がどのような特徴を有するのかを検討するため,上顎欠損患者24名を用いてHS分類に従って検討した。その結果,母音[a],[o]に比較し,[i],[u],[e]では健常者の棄却楕円からはずれる周波数を示すこと,欠損範囲の広いH3,H4症例では健常者の棄却楕円の外に位置するものが多いことが判明した。
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