研究概要 |
本年度より3ヶ年計画で痛みが中枢神経諸核のシナプス活性におよぼす影響に関する研究を開始した。対象は体重送400gのウイスタ-系ラットである。痛み刺激としては三叉神経末梢部に電気的侵害刺激を与える方法を採用した。この刺激は一次中継核である三叉神経脊髄路核・二次中継核である視床,それに大脳皮質へと伝えられ,これは電気生理学的に誘発電位を記録することによって確認される。しかしながらこの刺激が最終的に中枢神経のどの部位において痛みとして認知されるかということは現在全くわかっていない。それにはまず,与えた痛み刺激が中枢神経のどの部位に伝えられるかということを解明することからはじめる必要がある。そのため本研究では脳の活動部位をマッピングする方法として考え出されたソコロフらのデオキシグルコ-ス法を用いることにした。そこで,ラットの腹腔内に麻酔薬を投与した後,〔 ^´ξ〕ーデオキシグルコ-スを静脈内に注入した。その後,三叉神経末梢部に電気刺激を40分間加えた。すると電気刺激が伝えられた部位においては,シナプス活性が高まりグルコ-ス利用率が増加する。その結果,グルコ-スは代謝により分解されるが,デオキシグルコ-スは分解されず局所にとどまる。したがって脳の局所のデオキシグルコ-ス濃度を測定することによって,痛み刺激によって活動のする部位を同定できるはずである。そこで電気刺激を加えた後,直ちに断頭し、ドライアイス,イソペンタンを用いて凍結後,凍結切片を作成し,オ-トラジオグラフィ-によって〔 ^´ξ〕ーデオキシグルコ-スの濃度の測定を行っている。なお,痛みをはじめとした体性感覚情報の統括部位としては頭頂連合野が考えられているので,特にこの部位について注目したいと考えられている。
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