研究概要 |
1.in vitro及びヌ-ドマウスで増殖しているヒト唾液腺癌細胞(HSGとHSY)の増殖は、Hexamethylene bisacetamide(HMBA)或いは8ーchloroadenosine 3':5'ーcyclic monophosphate(8ーClーcAMP)で処理すると,単層培養での増殖,anchorageーindependent growth及びanchorageーdependent growthは著明に抑制された。また,ヌ-ドマウス背部皮下で増殖しているHSG或いは、HSY腫瘍にHMBA,8ーClーcAMPを投与すると増殖は有意に抑制された。一方,ヌ-ドマウス腹腔にヒト唾液腺癌細胞を移植して調製した担癌ヌ-ドマウスに8ーClーcAMPを投与すると生存期間は有意に延長したが、HMBAでは生存期間の延長は認めなかった。2.HSG細胞を5ーazacytidineで処理すると、筋上皮細胞(HSGーAZA1)と腺房細胞(HSGーAZA3)に分化誘導されることを、すでに我々は明らかにしている。このHSGーAZA1細胞をプロテイン・キナ-ゼCのinhibitorである1ー(5ーisoquinolinylsulfonyl)ー2ーmethylpiperazine(Hー7)で処理すると、ニュ-ロン細胞に分化誘導されることを明らかにした。すなわち、HSG細胞をHー7で処理すると、豊富な微細線維とミクロチュブル束を保有する長い細胞突起を形成し、ニュ-ロフィラメントとニュ-ロン特異的エノラ-ゼの発現増強並びにシナプトフィジン及びカテコラミンの発現を認めた。HSGーAZA1細胞のプロテイン・キナ-ゼCの発現動態を解析すると、HSGーAZA1細胞はプロテイン・キナ-ゼのタイプI,II,IIIのすべてを発現していること,Hー7で処理するとタイプIIプロテイン・キナ-ゼCの発現が低下することを明らかにした。また、HSGーAZA1細胞はdibutyryl cAMPで処理するとニュ-ロン細胞に分化することを明らかにした。3.HSG細胞は活性型Haーras癌遺伝子を発現していること、またHSG細胞をHuIFNーαで処理すると細胞のEGFレセプタ-数が有意に減少することを明らかにした。なお、がん遺伝子変異の解析のために、Thermal sequencer TSRー300を購入し活用している。
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