研究概要 |
骨形成における初期石灰化機構を解明するため、当教室で樹立したヒト下顎骨骨肉腫由来細胞株の生物学的性状について検討した。A,B2つのクローンを比較したが、クローンBはALP活性は低く、PTHによるcAMPの上昇は認められなかった。これに対してクローンAは培養初期より高いALP活性を認め、PTHを培地中に添加すると、濃度依存性にALP活性の上昇がみられ、cAMP合成では10 MのPTHを投与すると約13倍に上昇した。また、PGEを添加すると、PTHの反応とは逆に濃度に依存して10Mでcontrolの74%にALP活性が抑制された。さらに活性化ビタミンDを培地中に添加してもALP活性の上昇は認められなかったこの細胞の染色体数は57-59にピークがみられ、トリプシンGバンド法にて8細胞分析の結果では、8pの共通した異常が認められた。この細胞株はヌードマウス移植可能であり、1×10個を腹部皮下に接種すると、1-2週間後に直径5-6mmの腫瘍を形成し、腫瘍の増大が認められた。腫瘍細胞は母組織とほぼ同一の組織像を呈し、3か月経過すると腫瘍内に類骨の形成が見られた。A、B両細胞共にType I collagen産生能がmRNAで欠如していた。さらにオステオカルシン合成も両細胞共に認められなかったが、クローンAでは、mRNAの発現は認められた。これらの結果から骨肉腫の場合、骨芽細胞の分化のどの段階で腫瘍化したかによって腫瘍の性質が異なり、さらに骨肉腫では通常の石灰化とは異なる機序によって骨の破壊、新生が起こっている可能性が示唆された。
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