研究概要 |
研究対象は,10年前の昭和56年に1歳6ヶ月児歯科健診を受診し,その後6ヶ月毎の診査によって3歳6ヶ月まで追跡調査された小児228名の内,本年度8月の12歳0ヶ月時に再び口腔内診査を受けた小児54名である。これらの対象について,本年度は通法の視診型による口腔内診査とカリオスタットによる齲蝕活動性試験を行い、同一人の3歳時乳歯列と12歳時永久歯列の歯科疾患罹患状況並びに齲蝕活動性の比較を行った。なお,齲蝕と齲蝕活動性については両歯列間の相関関係を統計的学的に検討した。 研究結果:1)3歳時の1人平均deft値と12歳時の1人平均DMFT値との間には,r=0.423で統計学的有意な相関関係が認められた(p<0.01)。2)3歳時のカリオスタット値と12歳時の1人平均DMFT値との間には,r=0.511で統計学的有意な相関関係が認められた(p<0.001)。3)乳歯列における正常咬合所有者率は59.3%,不正咬合所有者率は40.7%であり,正常咬合,不正咬合ともに,それらの内の1/3は永久歯列においてその咬合状態に変化を示した。4)乳歯列における過蓋咬合並びに上顎前突は,永久歯列においても同様な咬合状態を示す傾向があった。5)3歳時の歯肉炎罹患者率は非常に低く, 12歳時のそれは著しく高かった。 本研究では,乳歯列における齲蝕罹患並びに齲蝕活動性が,永久歯列における齲蝕罹患との間に有意相関を示したが,その相関係数は低く,乳歯列におけるそれらが将来の永久歯の齲蝕罹患傾向を推測する指標に単独ではなりにくいことを示唆した。
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