骨改造におけるメカニカルトレスの影響

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454483
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 作田 守 大阪大学, 歯学部, 教授 (60028751)
• 研究分担者: 相馬 俊一 大阪大学, 歯学部, 助手 (90236141) ; 中川 浩一 大阪大学, 歯学部, 助手 (60227741) ; 井上 博之 大阪大学, 歯学部, 助手 (90167271)
• キーワード: メカニカルストレス / 骨改造 / 骨芽細胞様細胞 / DNA合成 / 遠心負荷 / アルカリフォスファタ-ゼ活性 / プロスタグランデイン

研究概要

骨改造におけるメカニカルストレスの影響を調べるために、培養骨芽細胞に対する遠心負荷の影響をマウス由来の骨芽細胞様細胞(MC3T3ーE1)を用いて検討した。低濃度(0.3ー1%)の血清存在下で骨芽細胞様細胞(MC3T3ーE1)を30分間遠心負荷すると、負荷後18ー22時間合成が促進した。この促進作用は、高濃度(10%)の血清存在下で認められなかった。さらに低濃度の血清存在下では培養上清中に促進活性が認められた。これは、遠心負荷によって骨芽細胞様細胞から何らかの因子が培地中に放出されたものと考えられる。遠心負荷する時間とDNA合成の促進作用の関係は、3時間の遠心負荷後18ー22時間でDNA合成の最大促進が認められ、さらに負荷時間を長くすることによって促進作用が消失した。このことから、遠心負荷によるDNA合成促進作用は、細胞周期のG1期初期に関連した一過性のものであると考えられる。このDNA合成の促進作用は、インドメタシンによって影響を受けずに、Cーーtイネ-スのインヒビタ-のHー7によって抑制された。遠心負荷によるDNA合成の促進作用は、プロスタグランディンが関与している可能性は少なく、Cーーカイネ-スが関与している可能性が考えられた。さらに、血清存在下(1ー5%)で骨芽細胞様細胞を24ー48時間遠心負荷すると、骨芽細胞様細胞のアルカリフォスファタ-ゼ(ALPase)活性およびカルシ ウムの取り込みが抑制された。遠心負荷する時間を短くするとその抑制作用が減少したことから、DNA合成促進とは違ったメカニズムでALPase活性が抑制されていることが示唆された。以上の結果から、短時間(0ー5時間)の遠心負荷は、骨芽細胞様細胞から何らかの因子が放出させ、さらにCーーカイネ-スを活性化させることによって細胞増殖を促進させるが、長時間(24ー48時間)の遠心負荷は、細胞の分化機能の発現を抑制させることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] Y.HIRAKI,H.TANAKA,H.INOUE,J.KONDO,A.KAMIZONO,F.SUZUKI: "Molecular cloning of a new class of cartilageーspecific matrix,chondromodulinーl which stimulates growth of cultured chondrocytes." Biochem.Biophys.Res.Commun.175. 971-977 (1991)
• [文献書誌] "Y.HIRAKI,H.INOUE,C.SHIGENO,Y.SANMA H.BENTZ,D.M.ROSEN,A.ASADA,F.SUZUKI" J.Bone Mineral Res.6. 1373-1385 (1991)
• [文献書誌] H.INOUE,K.HIASA,Y.SAMMA O.NAKAMURA,Y.HIRAKI,M.SAKUDA: "Effect of centrifugal force on proliferation of osteoblastーlike cells"
• [文献書誌] 井上 博之、日浅 敬、三間 雄司,中村 修、作田 守: "荷重負荷に対する頭蓋及び顔面由来の軟骨の応答性について"
• [文献書誌] 開 祐司、井上 博之、鈴木 不仁男,田中 秀穂、近藤 淳、上園 昭人: "軟骨細胞の増殖分化機能を制御する軟骨特異的マトリックスChondromodulinーlその精製と分子クロ-ニング" 日本骨代謝学会雑誌. 9. 238-246 (1991)
• [文献書誌] N.INOUE,J.KATO,M.SAKUDA M.IWAMOTO,F.SUZUKI,Y.KATO: "Fundamentals of Bone Growth:Methodology and Applications" CRC PRESS INC., 626 (1991)