乳歯の生理的並びに病的歯根吸収に関しては、古くから多くの推論が存在する。また、そのメカニズムについては多くの学者が種々検討を試みているが、未だ解明されていない。一方、永久歯の根端病巣形成時あるいは歯周疾患にみられる歯槽骨の吸収については、病態及びそのメカニズムに免疫反応の関与が証明されている。しかし、乳歯及び永久歯の歯根吸収については免疫反応の関与は明らかにされていない。そこで、乳歯の歯根吸収における免疫反応の関与について解明する目的で、ヒト乳歯を試料として、免疫組織学的技法を用い、歯周組織及び歯髄における破歯細胞の誘導に関与する免疫化学物質あるいは免疫担当細胞や免疫グロブリンの局在及び実態について検索を試みた。すなわち、臨床的に咬合誘導上要技去と診断された健全乳歯及び非生活乳歯を根部歯周組織を一部付着させたまま技去し、被検材料とした。得られた被検材料は、固定、脱灰を施し、-80℃にして凍結させ、クライオスタットを用いて薄切切片とした。薄切試料に対し細胞の表面坑原並びに免疫化学物質に対するモノクロ-ナル坑体を作用させ、免疫組織学的染色法を施し鏡検した。このなかで、非生活乳歯の根端病巣における免疫担当細胞の局在に関しては、平成3年6月の第243回東京歯科大学学会において発表した。現在、健全乳歯及び非生活乳歯の歯根に接触した部の歯周組織について検索中であり、平成4年度中に終了予定である。
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