DNA複製と転写の連動は動物ウイルスの系を使って示されてきたが動物細胞遺伝子ではほとんど解明されていない。我々はc-myc、N-myc、イムノグロブリンH鎖、熱ショックタンパク質70(hsp70)、SV40、p53遺伝子、ヒト反復配列AluファミリーDNAを材料として以下の結果を得た。 まず生体内で実際に機能しているDNA複製開始領域(Ori)を同定した。ヒトc-myc遺伝子では転写開始点上流1500-2000付近、hsp70遺伝子ではプロモーター、マウスイムノフロブリンH鎖ではJ-Cイントロン、p53では第11エクソン下流約1000塩基対に同定され、この領域のプラスミドクローンは自律増殖活性(ARS)を示した。ヒトN-myc遺伝子も-1000塩基にARSが存在した。このori及びARSは転写エンハンサー又はプロモーター領域と重複し、cis領域での転写と複製の連動を明らかにした。 次にこうしたcis領域に結合するタンパク質を同定した。c-myc遺伝子ori/エンハンサーにはc-mycタンパク質がMSSPと名付けたタンパク質が、hsp70遺伝子にはc-mycタンパク質が同様にHSBPと名付けたタンパク質と複合体形成して結合する。このMSSPとHSBPのcDNAをそれぞれ2種、1種クローニングした。イムノグロブリンH鎖にはオクタマー結合タンパク質Oct-1が結合する。N-myc遺伝子のARS領域内のエンハンサー領域には45、110Kタンパク質が結合した。またSV40、Ori内のAT配列に結合するタンパク質をSOAPと名付け解析した結果、SOAPとMSSP-1は同一のものと考えられた。AluファミリーDNAは転写と複製の調節配列として機能し、そこには37Kタンパク質が結分した。これらのタンパク質はいずれも、1本鎖及び2本鎖DNAに塩基配列特異的に結合し、転写と複製の両機能に関与していると考えられた。
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