我々が見い出し、研究してきた、動物および微生物由来のプロリルエンドペプチダーゼの遺伝子をクローニングすることに成功し、触媒機構に関与する3つのアミノ酸残基を明らかにすることができた。驚くべきことに、偶然我々がクローニングしていた大腸菌プロテアーゼIIとこの活性に関与するアミノ酸残基周辺で高いホモロジーが見られた。プロテアーゼIIは塩基性アミノ酸に特異性を持つトリプシン様のセリンエンドペプチダーゼであるがタンパク質には作用できない点でトリプシンとは異なる。 更に、アシルアミノ酸遊離酵素やカルボキシペプチダーゼP、カルボキシペプチダーゼYもプロリルエンドペプチダーゼとホモロジーがあることが最近明らかにされた。 この遺伝子レベルでの研究により、プロリルエンドペプチダーゼはこれまで報告のあるトリプシンやサチライシン・ファミリーとは異なる新しいセリン酵素のグループに含まれることが分かり、プロリルエンドペプチダーゼ・ファミリーと命名した。この発見の成果は大きく、エンドペプチダーゼのみならずエキソペプチダーゼにまたがるファミリーは他に例を見ない。祖先タンパク質から種々の基質特異性を持つ酵素へ進化してきた過程を研究するうえでも、生理的役割を知るうえでも重要である。これまで、脳に高いプロリルエンドペプチダーゼ活性が見られ、生理的役割に興味が持たれてきた。今回、老化促進マウス脳を用い組織化学的研究も行った。 プロリルエンドペプチダーゼを遺伝子レベルで研究し、新しい分類に属する酵素であることを明らかにした。オリゴペプチドへの特異性は生理活性ペプチドの調節に関与することが示唆され、組織化学的研究の結果と合わせ興味あるものである。
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