研究課題
エナメル質欠損症は先天的に歯牙のエナメル質を欠くもので、重篤な歯牙の異常を生ずる。遺伝子的には異質性があり、伴性劣性型の他、常染色体性劣性など幾つかの型が知られている。エナメル質はアメロゲニンエナメリンなどの蛋白質の合成に引き続き、それと置換する型で合成が進むことが分かっている。我々は世界に先がけてアメロゲニン遺伝子のクロ-ン化に成功、それもX染色体短腕上の遺伝子とY染色体上の遺伝子の両者を同時にクロ-ン化、両者について塩基配列を決定した。その結果、両者とも少なくとも3個のエクソンを持つこと、そのうち最も上流(5')側にある小型のエクソンでは両者の塩基配列が完全に一致することが分かった。残る2個のエクソンについては、僅かながら両者の間に塩基配列の差が認められた。なおイントロンのうち1箇所で、Y上の遺伝子に限定する180塩基対強の欠失を認めたが、全体としてイントロンではエクソン部分に比べ塩基配列の差が大きい傾向が認められた。なおスェ-デンとの共同研究により、伴性劣性型の遺伝を示す1家系で、1卵性双胎と推定される1組の姉妹から生まれた計3例の患児(何れも男)を解析、全例で上記3個のエクソンの総てを含むおよそ5kbの欠失を検出した。この所見は、上記の3個のエクソンを含む計3区間のPCRおよび、サザンブロットの両者により確認された。これらの結果により、伴性劣性型のエナメル質欠損症の原因がアメロゲニン遺伝子の異常にあることが最終的に確定したことになるが、当然ながら本例は、本症の患者で原因遺伝子の変化を突き止めることに成功した世界で初の症例ということになる。
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