魚油中に大量に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)は、体内でアラキドン酸カスケ-ドにより代謝され種々の3型プロスタグランジンに変換される。しかしながら、これら3型プロスタグランジンは微量かつ不安定であるため、体内動態や生理活性の詳細な検討は因難であり、EPAの栄養学的意義の再検討を行うためには3型プロスタグランジンの超微量定量法の確立が必要である。そこで、今回、GC/MSを用いて生体試料中の3型プロスタノイドの定量的解析法とその検出量の評価を行なうため超微量定量において、迅速かつ簡便な前処理法を可能とする、抗3型プロタグランジンモノクロ-ナル抗体の作製を行った。 本年度は、抗血小板凝集作用を有すると考えられる、PGI_3の安定代謝体Δ ^<17>-6ーketoーPGF_<1α>のモノクロ-ナル抗体の作製を行った。即ち、EPAの牛大動脈より調製した血管内皮細胞を用いた生物変換を行い、HPLCにて精製後約50ugのΔ ^<17>-6ーketoーPGF_<1α>を得た。免疫原としてΔ ^<17>-6ーketoーPGF_<1α>とウシ血清アルブミン(BSA)との結合体を活性エステル法により調製した。免疫原を雌性Balb/cマウスに過免疫し、得られた脾細胞とBalb/cマウス由来ミエロ-マ細胞株、SP2/0ーAg14をポリエチレングリコ-ル(PEG)4000を用いて融合した。ハイブリド-マ培養上清と免疫原およびΔ ^<17>-6ーketoーPGF_<1α>との反応性を各種ELISA法にて検討し、特異性に優れるモノクロ-ナル抗体を得た。得られたクロ-ンの2型プロスタグランジンとの交差反応性をELISAにて検討すると、6ーketoーPGF_<1α>と5%程度の反応性は認められたものの、Δ ^<17>-6ーketoーPGF_<1α>との高い反応持異性が示された。今後本抗体を用いた生体試料中のΔ ^<17>-6ーketoーPGF_<1α>の回収・濃縮を行い、GC/MSを併せ用いて超微量定量法を確立すると共に、各種疾患に伴う含量変化等を検討し、PGI_3の生理的化義の解明を行う予定 である。
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