研究概要 |
アセチルコリン系のムスカリン性受容体拮抗薬の投与が健常なヒトで記憶障害を惹起すること,アルツハイマ-型老年性痴呆患者において、脳内コリン作動性神経系の活性低下が認められることから,中枢のコリン作動性神経系は記憶・学習機能に重要な役割を果していると考えられている。我々はマウスの学習能力と脳内扁挑核のアセチルコリン作動性神経系の活性に相関があることを見いだしたのが本研究の出発である。昨年度の研究で発見できたことは,1)扁挑核を両側性に破壊(電気的)されたマウスは受動的回避学習,条件回避学習や空間認知学習の遂行が低下することが認められた。2)スコポラミンを両側性に扁挑核に投与されたマウスは記憶の獲得ができなかった。この現象はスコポラミンを経口投与した時と同じであった。3)アセチルコリン作動神経の起始部である前脳基底部を破壊し,学習能力が低下したマウスの扁挑核にアセチルコリン類縁体を局所投与すると,学習能力に改善が認められた。4) ^3HーQNB受容体結合実験において,QNBの結合はスコポラミンによってdis placeされた。すなわち扁挑核にスコポラミンの結合部位が存在することが示唆された。5)マイクロダイアリシスを行って,無麻酔、無拘束下でのアセチルコリンの放出は,潅流液中にアトロピンまたは高カリウム濃度の潅流液によって持続的に増加した。麻酔下で前脳基底部を電気刺激するとアセチルコリンの放出は増加した。6)中医学で使用されている処方は扁挑核を両側性に破壊(電気的)したマウスの学習機能低下(受動的回避学習)を改善した。
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