血液凝固VIII因子とフォンヴィルブランド因子の異常は、これまで血友病Aおよびフォンヴィルブランド病として扱われてきた。これらの凝固因子蛋白の分析が進むにつれて、これらの異常は、単に蛋白質の先天性欠損症ではなく、種々の蛋白構造異常を伴う複雑な病態であることが明らかになってきた。 ヒトに発生したVIII因子に対する抗体を検討し、そのVIII因子蛋白上のエピトープを解析することにより、VIII因子蛋白の機能とフォンヴィルブランド因子との関係を検討した。この結果、L鎖を認識する抗体のエピトープはC2ドメインに存在し、これらの抗体はVIII因子単独に対してVIII因子とフォンヴィルブランド因子の複合体に対してよりも強く働くことが判明し、複合体の形成がこのエピトープ近傍に変化をもたらすものと推測された。 また、フォンヴィルブランド因子については、重要な機能を発現する部位であるexon28についてフォンヴィルブランド病typeII患者の解析を行い、2種類のポリモルフィズムを発見し、疾患の診断に有用であることを確認した。19例のフォンヴィルブランド病患者のフォンヴィルブランド因子遺伝子についてPCR法により増幅し、制限酵素 MspI 消化と電気泳動、AluI消化とMutation Detection Enhancement(MDE)gels electrophoresisによる解析を行った。exon28の制限酵素MspIでの消化による解析では5例に異常パターンを得た。exon28の制限酵素AluIで消化しMDE gel により電気泳動した結果、4例にhetero-duplex band を認めた。この研究からフォンヴィルブランド因子遺伝子exon28内に6種のpoint mutationを発見したが、他のexonには何等のpoint mutationも発見出来なかった。一方、40症例の血友病A患者については、Normandy variantを示すexon20のcodon854におけるmissense mutationの検索を行ったが一例も発見できなかった。
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