先天性出血性疾患の遺伝子治療に関する基磯的研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454523
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 斎藤 英彦 名古屋大学, 医学部, 教授 (20153819)
• 研究分担者: 恵美 宣彦 名古屋大学, 医学部, 医員 ; 谷本 光音 名古屋大学, 医学部, 助手 (10240805) ; 高松 純樹 名古屋大学, 医学部, 助手 (80221365)
• キーワード: VII因子 / レトロウイルスベクター

研究概要

第VII因子は、分子量約50,000のビタミンK依存性性受白でヒト血〓中には100-500mg/mlの濃度で存在し、外因系血液凝固反応のひき金として止血に重要な役割を果す。先天性第VII因子欠乏症は極めて稀な出血性疾患であるが、VII因子のcDNAがクローン化されて以来、DNAレベルで欠乏症の本能が解明できるようになり、VII因子の構造と機態との関係についての理解が深まりつつある。我々はFactorVIINagoyaと命名したユニークな先天性VII因子異常症ではVII因子遺伝子のエクソンVIIIに点突然変異(Ang304→Trp)のあることを同定し、以下の如く原因遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを作製して異常遺伝子を発現させ、正常遺伝子を発現させたものと比較した。正常または異常VII因子cDNAをレトロウイルスベクターpBabeNeoに挿入したものを、パッケージング細胞であるマウス線維芽細胞(PA317)にリン酸カルシウム法にてtransfectした。その後、G418による2週間のselectionを行った、上清中に分泌された正常あるいは異常VII因子を精製にその性質をしらべた。異常VII因子は正常と同じ分子量であるが、autoactivationをせず、組織因子のない場合にはXa、IXa、XIIaにより限定分解をうけないが、ヒト組織因子存在下ではXaによる分解のKmは正常VII因子の3.6倍であった。ligand binding assayでは、異常VII因子のヒト組織因子に対するKdは16.9nMで正常の7.2nMよりやや大きかった。一方、ウシ組織因子に対しては同じkdであった。これらのことから、VII因子のArg304がヒト組織因子との相互作用に重要であることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Matsushita, T.: "Construction and its expression of a new retroviral vector containing a human blood coagulation factor XI cDNA." Thromb Res in press.
• [文献書誌] Yamamoto, K.: "Impaired secretion of the elongated mutant of protein C(protein C-Nagoya): Molecular and cellular basis for hereditary protein C deficiency." J Clin Invest. 90. 2439-2446 (1992)
• [文献書誌] Yamamoto, K.: "Homozygous protein C deficiency: identification of a novel missense mutation that causes impaired secretion of the mutant protein C." J Lab Clin Med. 119. 682-689 (1992)
• [文献書誌] Yamamoto, K.: "Two novel sequence polymorphisms of the human protein C gene." Nuc Acid Res. 19. 6973- (1991)
• [文献書誌] Yamamoto, K.: "Genotype establishments for protein C deficiency by use of a DNA polymorphism in the gene." Blood. 77. 2633-2636 (1991)
• [文献書誌] Ichinose, A.: "Two types of abnormal genes for plasminogen in families with a predisposition for thrombosis." Proc Natl Acad Sci USA. 88. 115-119 (1991)