血小板凝集およびリンパ球系細胞の細胞相互作用に働く接着分子の構造ー機能相関

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454540
• 研究機関: 藤田保健衛生大学
• 研究代表者: 千谷 晃一 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (60179942)
• 研究分担者: 関口 清俊 大阪府立母子保健総合医療センター研究所, 病因病態部門, 部長 (50187845) ; 松井 太衛 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助手 (90183946)
• キーワード: ボトロセチン / フォンビルブラント因子 / 血小板凝集 / レクチン / フォンビルブラント病 / リストセチン

研究概要

ボトロセチンの構造とフォンビルブラント因子(vWF)活性化機構並びに血小板凝集機構:既にBothrops jararacaの蛇毒より精製に成功した(Biochemistry(1991)30,1957ー1964)モノマ-型、ダイマ-型2種のボトロセチンをそれぞれ還元、ピリジルエチル化後、ブロムシアンによる化学的切断やアクロモバクタ-・プロテア-ゼIなどによる酵素分解で得られるペプチドの構造解析から、それらの全アミノ酸配列を決定した。ダイマ-型ボトロセチンについてはその分子内ジスルフィド結合の位置も決定した。その結果、モノマ-型ボトロセチンは212残基から構成され、分子量は23,048と計算された。一方、ダイマ-型ボトロセチンは133残基から構成されるαサブユニットと125残基から構成されるβサブユニットが1個のジスルフィド結合で連結したヘテロダイマ-で、α、βサブユニットの分子量はそれぞれ15,191及び15,013と計算された。相同性検索の結果、モノマ-型は血小板GPIIIaのβ鎖前駆体に若干の相同性を示すのみであるのに反し、ダイマ-型はα、βサブユニット共Ca^<++>依存型(Cタイプ)レクチンと高い相同性を示し、実際Ca^<++>の存在下血球凝集作用を有することが判明した。しかし、vWFとの複合体形成はEDTAにより阻害されないことから、レクチンとしてvWFの糖鎖を認識しているのではないものと判断される(Proc.Natl.Acad.Sci.投稿中)。
さらに精製したダイマ-型ボトロセチンを用い、IIA型、IIB型フォンビルブラント病の患者の血漿からのvWFとの結合や、それら複合体の血小板凝集作用の相違を検討した。またリストセリン血小板凝集を阻害する抗vWF単クロ-ン抗体数種の内、2種の抗体のみがボトロセチン血小板凝集を阻害することを明かとし、両者のvWF結合部位は近接しているが、異なるものと推定される(Thrombosis & Haemostasis印刷中)。

研究成果

• [文献書誌] Y.Fujimura,K.Titani,Y.Usami,M.Suzuki,R.Oyama,T.Matsui,H.Fukui,M.Sugimoto & Z.M.Ruggeri: "lsolation and Chemical Characterization of Two Structurally and Functionally Distinct Forms of Botrocetin,the platelet coagglutinin lsolated from the Venom of Bothrops jararaca" Biochemistry. 30. 1957-1964 (1991)
• [文献書誌] Y.Fujimura,Y.Usami,K.Titani,K.Niinomi,K.Nishio.T.Takase,A.Yoshioka,& H.Fukui: "Studies on Anti-von Willebrand Factor(vWF)Monoclonal Antibody NMC-4,Which Inhibits Both Ristocetin-and Botrocetin-lnduced vWF Binding to Platelet Glycoprotein lb" Blood. 77. 113-120 (1991)
• [文献書誌] Y.Ozeki,T.Matsui,& K.Titani: "Cell Adhesive Activity of Two Animal Lectins Through Different Recognition Mechanisms" FEBS Letters. 289. 145-147 (1991)
• [文献書誌] Y.Fujumura,S.Miyata,S.Nishida,S.Miura,M.Kaneda,A.Yoshioka,H.Fukui,M.Katayama,E.G.D.Tuddenham,Y.Usami,& k.Titani: "The Interaction of Botrocetin with Normal or Variant von Willebrant Factor(Type IIA and IIB)and its Inhibition by Monoclonal Antibodies That Block Receptor Binding" Thronbosis & Haemostasis. (1992)
• [文献書誌] Y.Usami,M.Suzuki,Y.Ozeki,K,Nishio,H.Fukui,Y.Fujimura,& K.Titani: "Primary Structure of Two-chain Botrocetin:von Willebrand Factor Modulator Purified from the Snake Venom of Bothrops jararaca" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. (1992)
• [文献書誌] 松井 太衛,千谷 晃一: "von Willebrand因子の構造と機能相関(総説)" 医学のあゆみ. 160. 705-709 (1992)
• [文献書誌] Y.Fujumura & K.Titani(Bloom,Forbes,Thomas eds.): "Hemostasis and Thrombosis,3rd Edition,Chapter 17:Structure and Function of von Willebrand Factor" Churchill livingctone,Edinburgh,U.K., (1992)