研究概要 |
色素性乾皮症(XP)はDNA修復欠損、高率の突然変異と皮膚発癌を示し、8相補群からなる。XPDタンパクは分子修復機構上重要な役割を果たしている。まず大切なことはXPD細胞のUV感受性とDNA徐去修復能の欠損を相補するcDNA遺伝子をクローニングすることである。本研究も含めこれまで13人の日本人XPD患者を細胞融合法で確定した。XPDは、XPAに次いで、UVによるピリミジン2量体や(6-4)光産物のDNA損傷の修復能を80-90%欠損し、発癌が見られたが、欧米より神経症状をもつ例は稀であった。日本人XPD患者のXP59TO細胞をpSVOri^-で不死化した細胞株XP59TOpSVを樹立した。これに、ヒト正常cDNAのpcDおよびpCD2ライブラリー(G418耐性の選択マカーであるneo遺伝子を発現する)と、さらにλpCEV-cDNAライブラリーを導入して発現クローニングを試みた。pcD-cDNAとpcD2-cDNA導入とG418/UV選択によって得られたそれぞれ10個と21個のクローンにつき、UV生存曲線と不定期DNA合成(UDS)を検定したが、もっともUV抵抗性であったpcD2-D17クローンでも平均致死線量Do=15J/m^2、UDS=35-50%であり、いずれも親株XP59TOpSV(Do=0.7-1.2J/m^2,UDS=40 %)を十分に相補する結果が得られなかった。したがって、pcDとpcD2-cDNAの中に完全長のXPDcDNAがないことが示唆された。そこで、正常cDNAとLTRプロモター下流に一方向性に挿入し、かつneo遺伝子を持つλpCEV-cDNAライブラリー(10μg/ml)を大スケール(総数5x10^7細胞)でXP59TOpSV細胞に導入し、選択した。究極的に得られた2個の安定なUV抵抗性のクロ-ン(pCEV-D2,pCEV-D4:Do=1.5-2.0J/m^2)は、親株XP59TOpSV(Do=0.7J/m^2)の2-3倍の大きいDo値と70-80%UDSの部分相補した。修復能の高いpCEV-D2のゲノムDNAは、約9kbのMluIのplasmid制限酵素断片をもち、役2.5kbcDNAを含んでいた。このcDNAは、ERCC2cDNAを同じNotI部位とPCR増幅を示すので、XPDcDNAが発現クローニングされたことを示している。日本の3人XPD細胞のmRNAをRT-PCRすると、2細胞では予想のPCR産物が得られたが、少なくとも1例にmRNA量の異常が見られた。これを基礎にXPDの突然変異と修復への分子的関与を今後明かにしたい。
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