我々は、マウスの発生初期に極めて特異的に出現する転写制御因子の一つとしてOct-3を同定した。ここではOct-3の機能・発現制御機構などを調べる事により、哺乳動物の初期発生を支配する遺伝子プログラムを解析しようと試みた。 1)まづOct-3の転写因子としての機能を調べ、DNA-結合に必要なドメイン・DNA-結合特異性を決定した。また転写活性化に必要なドメインを決定し、それと相互作用する別の転写因子の存在を明らかにした(Imagawa et al.1991)。 2)多分化能を持つ胚性腫瘍細胞・胚幹細胞はOct-3を発現する。胚性腫瘍細胞P19を繊維芽細胞と融合すると、Oct-3の発現が消失し神経系細胞へと分化した。この融合細胞へOct-3の機能を導入すると、脱分化を引き起こした。この事は、Oct-3が多分化能の維持に必要な遺伝子である事を支持している(Shimazaki et al. 投稿中)。 3)Oct-3遺伝子自身の発現制御機構を調べ、その制御領域を決定した(Okazawa et al.1991)。さらにその制御領域を認識するDNA-結合因子を探索し、RABP と呼ぶ因子を検出した。RABP はその存在パターン・結合特異性などよりOct-3遺伝子のリプレッサーと予想された(Shimazaki et al投稿準備中)。
|