ユビキチン(Ubiquitin)は真核細胞に普偏的に存在し、広く蛋白質代謝に関連する。ユビキチン活性化酵素E1により活性化され、一群のFamilyを形成する結合酵素(Conjugating Enzyme:E2)に転移し、直接あるいはUbiquitin ligase(E3)によって最終のターゲット蛋白に結合することによりその機能を発現する。これは多様な細胞機能に関わる現象と想像されてはいるが、その範囲とそこでの機能特異性がどの様に発現されるか、具体的にはほとんどわかっていない。 マウス培養細胞系から極めて効果的にユビキチン活性化酵素E1遺伝子の変異株を分離する系を確立した。これにより得られた同遺伝子変異株の細胞周期停止点の解析から、ユビキチン系が細胞周期G1、S、G2/Mの各期における細胞の基本機能を制御していることを示した。また第一義的に影響を受ける細胞周期の機能を変異特異的であることから、各期の機能を独立した特異的ユビキチン経路によることがわかった。 DNA合成機能にかかわるユビキチン経路を探索するために、細胞抽出液を用い、S期阻害の顕著な変異株で特異的に反応性の低下したE2蛋白質を探したところ、分子量20kDaの蛋白質を同定した。現在これを精製中である。 ユビキチン活性化酵素が細胞周期調節の中枢機能を担っているcdc2またはcdk2リン酸化酵素の基質である可能性を見いだした。リン酸化部位と思われるアミノ酸残基を変化させるとDNA合成の開始、進行が完全に阻害されることが判明した。現在正確なリン酸化部位を決定しようとしている。
|