神経終末部における生理活動は、生体制御や知的機能の基礎をなしている。従って、この部位の反応機構の解析は高度な生体機能の理解にもっとも重要である。本研究では、この神経終末の活動を高速画像処理によって強化した光学(DIC)顕微鏡によって直接捉え、動的な特性を調べ、その分子機構の解明を目指すものである。これまでの観察で次のようなことが分かった。初代培養クロマフィン細胞に形成される神経突起の先端は隣の細胞に接着しシナプス様の特別な形態を作った。このような部位で節前線維を刺激すると終末内の分泌顆粒が多数弾けるような急激な変化をするのが見られた。この反応は外液中カルシウムイオン依存性で、カドミウムやランタンにより抑えられた。反応した顆粒の大きさは、最小0.1umであった。反応は隣接細胞との接触面において特に高い頻度で起こった。繰り返し刺激をすると促通現象が見られた。また、多数り繰り返し刺激をすると疲労現象が観察された。このとき、終末内の顆粒数は減少するのが見られた。このような性質から、微小な顆粒の弾けるような反応はエキソサイトーシスであることが分かった、CaイメージングとDICイメージングを同時に超高倍率で行う装置を開発しシナプス様の接合部を観察すると、節前部のエキソサイトーシスに伴って節前Ca信号が節後細胞に伝達するのがわかった。これによってシナプス伝達におけるエキソサイトーシスの可視化が初めて証明された。シナプス伝達のエキソサイトーシスメカニズムとして、これまで広く信じられてきた2つの仮説、すなわち、顆粒の膨潤仮説と顆粒の細胞膜への衝突仮説はいずれも誤りであることが分かった。顆粒同士の融合は起こらないので顆粒と細胞膜の融合は細胞膜側の分子が鍵となると思われる。神経終末には電気刺激による急速なフィロポディアの発芽反応があることも見出した。これはシナプスの可塑性と強い関係にあると考えられる。
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