研究概要 |
本年度は脳磁界応答の解析方法の確立と,純音および単音節音声を刺激とした誘発脳磁界応答の計測と磁界発生源の解析に関する研究を行い,以下のような結果を得た. 1.新たな磁界発生源の推定法(パラメ-タ探索法)を開発した.この方法では最大4個までの磁界発生源を推定することが可能であり,S/Nが低い場合においても発散することなく安定に解を得ることができる.また,潜時毎の磁界分布から磁界発生源を推定することにより脳磁界発生源の時空間的解析法を確立し,磁界発生源としての神経活動領域の中心を動的に調べることを可能とした. 2.フォルマントおよびピッチ領域の周波数(170Hz,400Hz,1kHz,2.5kHz)の純音を刺激とした誘発脳磁界応答を計測し,パラメ-タ探索法による磁界発生源の時空間的解析を行うことにより,磁界発生源の時空間的な振る舞いが刺激音周波数により変化することを明らかにした.また,4名中2名の被験者では潜時約100msに現れる脳磁界応答で磁界発生源の位置変化(後変から前変)がみられたが,他の2名ではみられず,磁界発生源の時空間的な振る舞いに被験者による差異があることを示した. 3.単音節母音/a/に対する脳磁界応答を計測し,純音刺激と同様な時空間的解析を行うことで,純音刺激に比べて顕著な磁界発生源位置の変化(後方から前方)を見いだした.このような純音と音声刺激による脳磁界応答の解析から,磁界発生源の動的な変化が聴覚野内の神経活動による音声処理過程を反映している可能性を示した. 4.以上の結果より,純音に対する聴覚野内の神経活動および音声処理機能の解明における磁界発生源の時空間的解析法の有効性を示した.
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