研究概要 |
1.イタボヤ類におけるallorecognitionの研究では,Botrylloides fuscusのallorecognitionについて組織学的・遺伝学的に調査した.この種では,成長端接触では自己・非自己の認識が出来るのに,切断面接触では認識が出来ずに癒合してしまうBotrylloides violaceus型のallorecognitionを示した.また,同一集団内でも異なる集団間でも癒合する組合わせが多く,他の多くのイタボヤ類とは異なり,癒合性遺伝子の多型の頻度が少ないことが明かとなった.さらに,Botrylloides simodensisを用いてallorecognitionにおける血球の役割について,血球の走化性を調べることで明らかにしようと試みた.その結果,非癒合群体の血漿に対して血球の走化性が大きく,走化性を示す血球は,6〜9種類の内lymphocyteーlike cellとmorula cellの2種類であった. 2.イソカイメン類のダイダイイソカイメンとクロイソカイメンにallorecognitionが存在した.ダイダイイソカイメンでは,非癒合の2群体接触後組織の癒合が起り,その後中膠細胞が境界面に集合し,最終的には境界面にコラ-ゲン様の物質で仕切が形成される.一方,クロイソカイメンでは,2群体癒合後,やはり中膠細胞が境界面に集合してくるが,コラ-ゲン様の物質による仕切は形成されない.しかし,集合してくる細胞の数はダイダイイソカイメンよりはるかに多い.両種間では,拒絶反応が示されたが,組織の癒合は起らず,接触部域に繊維性の物質を分泌し,境界部に中膠細胞が集合してくる.接触部域は繊維性の物質で架橋されたようになる。 3.コケムシ類では,チゴケムシを用いてallorecognitionの存否を調べた.その結果,異系統群体間では,成長端接触時に接触部域の両群体で個虫の死が起る拒絶反応と,一方が他方の上にのりあげて相手群体を死滅させる反応が認められた.
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