研究概要 |
1.イタボヤ類におけるallorecognitionの研究では,青森県浅虫で10m四方の範囲から採集したBotryllus schlosseriの集団内での癒合・非癒合の割合を調べ,さらに,allorecognitionの様式について観察した。その結果,癒合する組合わせが少なく,癒合性遣伝子の多型がこの集団にも存在することが明かとなった。また,allorecognitionの様式は,アメリカ西海岸モンテレイの集団やイスラエルの地中海沿岸の集団と同様であった。そして,遠く離れた浅虫,モンテレイ,イスラエルの3集団間での癒合・非癒合を調べたところ,浅虫とイスラエルの集団間では癒合する組合わせが無かったが,浅虫とモンテレイの間では12%,イスラエルとモンテレイの間では4.5%の癒合率を示した。これは,集団間に共通の癒合性遣伝子型が保存されていることを意味し,これら遠隔3集団が共通の起源に由来することを示唆している。 2.イソカイメン類のダイダイイソカイメンとクロイソカイメンの異種間での認識反応の存在が確認された。異種間では,同種間の様に組織の癒合後拒絶反応が起るのではなく,組織の癒合は起きないが,同種間の拒絶反応と同様に,接触面に多量の中膠細胞が集合してくる。これは,イソカイメン類では中膠細胞が組織適合性を認識なる主要な細胞であることを示唆する。 3.コケムシ類のチゴケムシでのallorecognitionの研究では,同一群体で群体が癒合することを確認した。さらに,異群体間でも癒合する場合が存在することも明かとなり,群体ホヤやイソカイメンと同様に癒合性,即ち組織適合性に関して遺伝子的な支配が行われていると考えられる。認識に関与する組織あるいは細胞については,詳細な情報を得ることが出来なかった。
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