原子間力顕微鏡(AFM)によりナノメーターの空間分解能で液中にある蛋白質のありのままの表面構造を観察できる。更に、蛋白質表面と探針先端(もしくは、探針に結合した蛋白質)との間に働く力を定量できる。従って、AFMは今後生物科学の進歩に大きく貢献することが期待されている。我々が本研究を開始した当時の市販のAFMでは、基盤にランダムに点在する試料を観察するためには何回かのめくら走査をしなければならず、生物試料の観察や操作に適したものではなかった。この問題を克服するために、倒立型蛍光顕微鏡と一体となったAFMを本研究で開発した。そのZアクチュエータは短い円筒ピエゾで、その上部がサンプルステージになる。対物レンズは下からその円筒ピエゾの中空部に挿入される。このピエゾは太いので、その上部はXY方向にほとんど変位しない。そこで、XYアクチュエータとして2枚の直交する板ピエゾを、円筒ピエゾの底部に付けた中空円盤に接触するように水平に配置した。蛍光顕微鏡で蛍光染色された生物試料と探針先端を同時に観察できる。サンプルステージとカンチレバ-・光学系のXY位置を独立に決めることができるので、見たい試料に探針をピンポイントアプローチできる。このことは得られたAFM像が基盤の凹凸や混入したごみなどでなく、観察すべき試料のものであることを保証する。更には、探針先端に蛍光染色された蛋白質を捕捉することを容易にする。完成した装置で、アクチンフィラメントやミオシン頭部が液中で鮮明に観察された。また、アビジン-ビオチンの強い結合を利用して、探針先端にミオシン1分子を捕捉することに成功した。
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