研究概要 |
1:FCPAの細胞内部位 FucoxanthinーChla/c Protein Assembly(FCPA)が光合成膜の表面に付着しているのか、内部に埋まっているのかを知るために褐藻Ectocarpuaの光合成膜分布画をしらべ,この顆粒が膜の表面に付着していないことを明らかにした。 2:FCPAの分子構築:FCPAを非変性ゲル電気泳動法によって二種の亜粒子を分離する条件を開発した。移動速度の大きい亜粒子はfucoxanthinーChla/c蛋白の単量体で、蛋白ー分子(polypeptideの分子量20,000)に4分子のfucoxanthin,2分子のChlc,4分子のChlaが結合し、fucoxanthin→Chla,Chlc→Chlaの両過程で100%に近いエネルギ-転移を示した。移動速度の遅い緑色の亜粒子は60kDa前後のpolypeptide二本が主成分で、Chlcを含まない。緑色のバンドは蛋白量で単量体のバンドの1/4.0ー1/4.3で、緑色の亜粒子一つにつき60kDa前後のpolypeptideが二本含まれるとすると、fucoxanthin Chla/c蛋白の単量体は24ー26コ結合して、約70万の集合体をつくっていることになる。緑色の亜粒子がFCPAのコアをつくり、これをfucoxanthinーChla/c蛋白の単量体が取り囲む配置が想定される。 3.光捕捉系中Fucoxanthinの吸収型:FCPA中のfucoxanthinの吸収は有機溶媒中のそれより長波長に移行しているが正確な吸収型を知るためにFCPAの吸収の要素スペクトルへの分解を試みた。得られたfucoxanthinのスペクトルの極大は478nmでエネルギ-転移能を示す状態のFCPAでのfucoxanthinのCDシグナルの極大(478nm)と符合し、光捕捉に働いている状態のfucoxanthinは極めて極性の高い場におかれていることが考えられる。 4.FCP結合fucoxanthin分子の吸収変化:FCPA中のfucoxanthinは長波長型だが温度処理をすると青色移行しfucoxanthin→Chlaのエネルギ-転移能が失われる。この変化に伴ってChlaのバンドの幅が広がり同時にCDスペクトルのシグナルが減少し,分子の配列が不規則なものに変わったことを示す。しかし温度処理の前後でfucoxanthinの共鳴ラマンスペクトルは変化がなく、fucoxanthin→Chlaのエネルギ-転移ではfucoxanthin分子の内部構造よりfucoxanthinとChlaの相互作用が本質的であると考えられる。エネルギ-的に共軛している状態ではfucoxanthinとChlaが強い相互作用をもつ共軛対を作り、この相互作用がChlaの吸収係数の増大とfucoxanthinの赤色移行を惹き起こしていると考えるのが妥当であろう。
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