研究概要 |
1.研究目的:本研究代表者らは最近、CaOとSiO_2を主成分とするガラス粉末をリン酸アンモニウム水溶液に混ぜると数分以内に固まり、生体骨と自然に結合し、しかもポルトランドセメントの3〜4倍の圧縮強度を示す生体活性セメントが得られることを見い出した。この種の材料は手術室で任意の形に成形できる骨修復材料として、また薬物を所望の場所に所望の速度で放出させる薬物担体などとして有用である。本研究は、同生体活性セメントの凝固硬化機構、並びに体液との反応機構を追究することを通して、上記の応用の可能性を明らかにすることを目的とする。 2.研究結果:CaO-SiO_2-P_2O_5-CaF_2系のガラス粉末とリン酸アンモニウムの水溶液を1g/0.5〜0.8mlの割合で混ぜると、一般に短時間で凝固し、凝似体液に侵漬すると比較的高い圧縮強度を示すセメントが得られる。ただし、その圧縮強度は、ガラスのCaO/SiO_2/P_2O_5比によって著しく変化し、CaO 47.1,SiO_2 35.8,P_2O_5 17.1,CaF_2 0.75重量比組成の時の最大値を示す。この組成からCaF_2を除去してもMgoを添加しても、圧縮強度は著しく低下する。ガラス粉末の粒度が5μmを越えると圧縮強度は低下する。水溶液のリン酸アンモニウム濃度が高くなると圧縮強度は高くなり、pH7.0〜8.3で3.7Mの時最大値を示す。この混合物の凝固は、ガラス粒子間に非晶質リン酸カルシウム相が生成することによって生じる。この非晶質リン酸カルシウム相は、ガラスから先ずカルシウムイオンが、続いてケイ酸イオンが溶出し、リン酸アンモニウム水溶液中のリン酸イオンと反応することによって形成される。この混合物の硬化は、擬似体液中でガラス粒子間に結晶性のアパタイトが生成することによって生じる。この際、混合物中で多量のカルシウムイオンとリン酸イオンがリン酸アンモニウムカルシウムー水和物の形で固定されれば、それが擬似体液中で多くの水酸アパタイトを生じ、より高い圧縮強度を与える。
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