研究概要 |
NFE-1(GATA-1)の生理機能を分子生物学的に解析した。特に赤血球細胞に於けるGATA-1の分化決定因子としての役割を解析した。エリスロポエチン(Epo)レセプターを介したシグナルがGATA-1の転写活性を増加させ、又GATA-1がEpoレセプター遺伝子を活性化する為、赤血球分化決定因子として働くことを明らかにしたが、レセプター以降のシグナルがmRNAばかりでなく蛋白レベルの急激な増加を促し、更にセリンスレオニン残基がリン酸化されることを明らかにした。リン酸化は3ヵ所で起き活性化されると、自己の遺伝子やEpoレセプター,グロビン遺伝子を活性化することが判明した。EpoレセプターにEpoが結合する前に低レベルで発現しているGATA-1は自己遺伝子の活性化能はないと考えられる。またGATA-1がHLH蛋白で造血細胞特異的に発現しているSCL遺伝子を活性化すること、また赤血球特異的に発現しているホメオ遺伝子郡の遺伝子の活性化を促す事を証明した。またEpoレセプター遺伝子をIL3依存性細胞に発現させた場合、Epoを投与すると細胞分化シグナルが伝達され、GATA-1,SCL遺伝子の発現を活性化し、ヘモグロビン産生細胞へと形質変換可能であった。従ってEpoレセプターの発現と親細胞に発現している低レベルのGATA-1の存在が免疫系細胞を赤血球系に分化誘導可能であること又これが分化決定の為の必要条件であると結論した。SCL遺伝子のターゲットが不詳であったがEpoレセプター遺伝子がその1つであった。またギメラレセプターを用いた実験から、細胞外領域のみによって赤血球分化のシグナルが伝達されることを証明し、細胞膜蛋白がシグナル伝達に重要であることを明らかにした。
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