研究概要 |
1.四極子核に対して,異なる2つの試料回転軸方向のスペクトルの間で2次元粉末スペクトルを観測する方法を開発し,ロツシェル塩の^<27>Alに対して実験を行った.この2次元スペクトルは二次四極子相互作用テンソルおよび化学シフトテンソルの主値,および両テンソル間の相対方向に依存する.実験はmagic angleと37.4°の間で回転軸を切り替えながら行った.得られた2次元スペクトルでは化学シフト異方性の影響が認められたものの四極子相互作用に比べて小さいため,パラメータを決定するには至らなかった.しかし,四極子パラメータには1次元スペクトルよりもさらに鋭敏であることが分かった. 2.DAS法のために製作されたプローブは回転軸の切り替えが可能なため,SASS法にも使用できる.β-シクロデキストリン/フェロセン包接化合物およびコール酸/γ-バレロラクトン包接化合物にSASS法を適用し,包接されたゲスト分子の^<13>C化学シフト粉末パターンの温度変化測定を行い,動的振舞の詳細を研究した.前者では単位格子中の4つのゲスト分子が5つの可能なサイトを占める仕方に3種あり,それらの3つのコンフィギュレーションの間を交換していることを示した.それらの間のエンタルピー差およびエントロピー差は4.8kcal/mol,19euである.後者ではγ-バレロラクトンのコンホメーションを決定するとともに,有限個の等方的に分布したサイトの間を再配向していることを示し,これらのことから,この包接化合物の分子認識機構に対するモデルを提唱した.
|