研究課題/領域番号 |
03505003
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木原 諄二 東京大学, 工学部, 教授 (00010801)
|
研究分担者 |
井寄 裕介 日立ツール(株), 開発部・開発一課, 主任研究員
渋木 邦夫 東芝ダンガロイ(株), 工具本部・工具開発課, 主任研究員
井原 郁夫 長岡技術科学大学, 助手 (80203280)
相澤 龍彦 東京大学, 工学部, 助教授 (10134660)
|
キーワード | PVD / T:N / コーティング材 / 表面改質材 / 超音波スペクトロマイクロスコピー / 分散特性 / 5軸制御系 / 残留応力分布 |
研究概要 |
PVD被覆材料の界面強度評価手法の開発研究は本年度が最終年度であり、最終的に評価手法の確立と種々のPVDセラミックコーティング材料に対して本手法の適用を試みた。研究者らが提案、開発してきた超音波スペクトロマイクロスコピー法による非破壊定量材料評価法は、大別して5つの特徴を有しており、それらを用いて、コーティング材質特性、コーティング-基材界面強度に関する音響診断が可能となる。第1は、超音波の反射係数の絶対測定機能とそれを用いた界面剥離の評価であり、4点曲げ・引張試験を内臓した超音波スペクトロマイクロスコピーにより、オンラインでも破壊起点を数μmのオーダーで測定することも可能である。第2は、スペクトロスコピーによるコーティング膜固有の分散特性であり、コーティング条件のみに依存する分散曲線から、第3相の析出(TiC膜の場合のC,Co拡散相)などによる破壊前段階のコーティング組織不整を非破壊的に同呈することが可能である。第3は、測定される分散曲線から多層近似を利用してのコーティング材の弾性特性推定であり、これにより組織的に、各コーティング条件におけるコーティングの力学特性をもとめることができた。第4は、分散特性への音弾性の影響評価であり、従来のX線解析(sin^2θ法あるいは垂直ひずみ法)では得られないコーティング膜内部の残留応力分布が測定でき、かつPVDコーティング条件の影響(バイアス電圧・保持温度)を評価することもできるようになった。なお、測定精度に関しては、引き続きレーザーラマン顕微鏡などを併用して検討している。第5は、開発した超音波スペクトロマイクロスコピー装置が、分散特性測定のためのθ方向の制御に加えて、これと独立に、回転方向(φ方向)およびx,y,z座標軸方向に超音波レンズを制御できる機能を有し、実測表面波速度にして数m/s以下の精度での制御が可能であるので、上記の特性を対象材料の組織構造に応じて活用できることである。特にコーティング断面における詳細測定、解析からは、スパッタリング時のイオン注入条件に応じて生じる内部構造と音響特性との関連を論じることが可能となった。上記の5つの特性は他の手法では実現できないユニークな方法論であり、開発した評価手法は今後の研究によっては、薄膜材料、表面改質材料など、表面の材料組織構造がその材料の力学特性を決する場合に、無二な手法として、その威力を発揮すると思われる。
|