研究概要 |
PVD(Physical Vapour Deposition)法に代表されるセラミックコーティングは,塑性加工等で使用される金型グイス・工具の長寿命化,摩耗低減のための必須な技術となっており,また最近では,構造物等にもこの種のセラミックコーティングが使用されている。しかし,その力学特性はスクラッチ試験社度であり,非破壊定垂評価にいたっては皆無といって良い程に研究されていない。本研究は,PVD被覆材料の界面強度評価手法の確立と種々のPVDセラミックコーティング材料への適用を試みた。本研究を通じて提案,開発してきた超音波スペクトロマイクロスコピー法は,(1)超音波反射係数の絶対測定機能とそれを用いた界面剥離の評価(数μmオーダでの破壊起点のオンライン測定),(2)コーティング膜固有の分散解析からの第3相の析出などによる破壊前段階のコーティング組織の非破壊的同定,(3)多層近似によるコーティング材の弾性特性推定と力学特性評価,(4)分散特性への音弾性の影響評価によるコーティング膜内部の残留応力分布の測定およびPVDコーティング条件の影響評価,(5)5紳独立制御により弾性ならびに塑性異方性の評価と材料組織構造の音響診断などに,特徴がある。上記の5つの特性は,X線法(X線応力解析を含む)・レーザークマン法などの手法では実現できないユニークな方法論をうみ出すものであり,本研究で開発した評価手法は,今後の研究によっては,薄膜材料,表面改質材料(窒化,炭化など,イオン注入材料)など,表面の材料組織構造がその材料の力学的特性を決する場合に,無二な手法として,その威力を発揮すると思われる。
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