研究課題/領域番号 |
03554001
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
天文学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田原 譲 名古屋大学, 理学部, 助手 (10135296)
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研究分担者 |
千田 治光 オークマ株式会社, 第一開発部, 研究員
国枝 秀世 名古屋大学, 理学部, 助手 (00126856)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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キーワード | X線光学 / X線望遠鏡 / 超精密加工 / 表面粗さ / コーティング |
研究概要 |
宇宙の初期進化を解明するうえで鍵となる、X線背景放射や銀河団、活動的銀河核といった天体のX線による観測的研究では人工衛星に搭載された、X線望遠鏡が必須であるが、大きな集光力を持つ薄板多重型X線望遠鏡では、その解像力は可視光の望遠鏡に比べ2-3桁低い(HalfPowerDiameter(HPD)=3分角)のが現状である。その主たる原因はX線鏡面として超平滑であり、かつ明るい斜入射光学系において超薄肉(0.1-0.5mm厚)であることが要求される鏡面基板を高い形状精度で作ることが困難であったためである。 我々はこの超薄肉鏡面基板の製作法として、従来1mm厚以下ではミクロン・オーダーの加工が困難と考えられてきた、旋盤の切削加工法を、破加工物の保持方法を工夫することで適用できないかと考え、HPD=3分角を目標に研究することにした。本研究では実際に直径150mm、長さ100mm、厚さ0.3mmのアルミ円錐鏡面基板を真空チャッキング法と樹脂接着法の2種類の保持方法で試作した。次に、これにアクリル・コーティングと金蒸着によりX線鏡面にするプロセスを確立した。できた円錐鏡面の機械的、光学的評価と、X線による直接評価を行ないその結果、樹脂接着法を用いて試作された円錐鏡は、アルミ・フォイルを用いた従来の多重薄板X線望遠鏡に比べ約40%改善された結像性能を持っていることが明らかになった。結像性能の劣化に影響している因子では、(A)10mmより長いスケール、(B)10mmより短かいスケール、(C)光軸回り(真円度)の3つの分けて調べると、(B)の寄与が一番大きく、これがさらに40%改善されれば当初の目標である1分角(HalfPowerDiameter)が達成できることがわかった。 またこのことは超精密加工技術という側面から見れば、板厚1mm以下の超薄肉部品を100mmスケールにわたりミクロン・オーダーの形状精度(軸方向平坦度5um)で製作する新たな方法が得られたことになり、極限技術として新たな応用の可能性も考えられる。 今後、この技術を基に高性能のX線望遠鏡をシステムとして実現していきたいと考えている。
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