研究課題
本年度は本研究の最終年度であり、交付申請書の研究実施計画に沿って、以下の研究を行った。(1)昨年度に構築した波面測定カメラを188cm望遠鏡用アパチャマスキングカメラに搭載し、大気の乱流成分の挙動を測定した。(2)昨年度より開発を始めた波面測定ビデオデータの解析ソフトを完成させ、7万枚に及ぶ波面データの自動解析を行った。このシステムにより、これまでの解析では統計誤差に埋もれて見過ごされていた干渉フリンジを実測することに成功した。(3)世界初のドームシーイングモニターを完成させ、岡山天体物理観測所188cm望遠鏡のドーム内外における大気揺らぎの強度と周波数特性の実測を行った。ドーム内部の乱流の寄与はドーム外の寄与の約1/2程度であること、風防スクリーンを用いて風の侵入を抑制するとドーム内部での乱流の高周波成分の強度が減少することが実証された。(4)昨年度に完成した高速像追尾装置に赤外線カメラを搭載し、赤外域での像追尾装置による波面補償の効果を実測する実験を行った。データの解析を進めている。(5)高次波面揺らぎを補償するために昨年度より試作を始めた補償鏡を完成させた。補償鏡は、直径50mm、厚さ0.5mmのガラス製で裏面に接着された37本のピエゾ駆動素子により、形状を制御する方式のものである。薄ガラス鏡の研磨・アルミ蒸着・ピエゾ素子の接着を行い、独自の形状可変鏡を完成させた。(6)昨年度に試作を開始した可変形状補償鏡の駆動装置及び制御系を完成させた。(7)補償鏡と駆動制御系を制御回路で結んで駆動試験を行った。その結果、鏡面精度0.07λ(rms)を達成していることが確認された。(8)天体を用いた試験観測を行うには至っていないが、補償光学装置の重要要素の試作は完了した。
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