本研究の目的は、我々が独自に考案・開発したRHEED-TRAXS法(反射高速電子回折-全反射角X線分光法)と呼れる固体表面解析・分析法をさらに高度化させた「高分解能TRAXS法」を実現することにある。この目的のもと、本年度に行った研究の実績を以下に述べる。 (1)X線分光結晶と位置敏感型X線検出器及びゴニオメ-タを組み合わせて、X線分光システムを設計・製作し、現有機器のRHEED-MBE(分子線エピタクシ-)装置に組み込みんだ。 (2)真空試験及び幾何学的配置等の調整の後、RHEEDパタ-ンを観察しながら、試料から放射されるX線を分光し、位置分析回路及びマルチチャンネルアナライザ-でパラレル検出してエネルギ-スペクトルを得、本研究の第一段階の目標を実現した。 (3)LiF(200)結晶を使って、Siウエハ表面に蒸着したGa原子からのKα_1(9.252keV)線とKα_2(9.225keV)線付近のエネルギ-スペクトルを測定し、約13eVのエネルギ-分解能が達成されていることを確認した。これは、従来のTRAXSで用いてきた半導体X線検出器での分解能150eVに比べ、約10倍向上したことになり、本研究の第二段階の目標をほぼ実現した。しかし、次の目標である、EXAFS(Extended X-ray Absorption Fine structures)解析には不十分であるので、ゴニオメ-タ等の改良が必要である。 (4)結晶分光器を用いた場合、X線の強度が非常に微弱になるのではないかと心配していたが、十分な強度で検出され、短時間の測定(1、2分)で良好なS/N比のスペクトルが得られたので、従来のTRAXSで行っている動的な現象の測定等にも対応できることがわかった。 今年度の実績を踏まえ、来年度は、ゴニオメ-タに多少の改良を加え、この手法を本格的に表面研究に応用していく予定である。
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