研究課題/領域番号 |
03554013
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物理化学一般
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安積 徹 東北大学, 理学部, 教授 (90013490)
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研究分担者 |
藤井 金苗 日本電子(株), 分析機器技術本部, 課長
前田 公憲 東北大学, 理学部, 助手 (70229300)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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キーワード | CIDNP / ESR / CIDNP検出ESR / ラジカル対 / ジクロロベンゾキノン / SNP / DNP |
研究概要 |
溶液内化学反応の多くは結合切断に伴って起るラジカル対生成にはじまるが、その後の反応経路はナノ秒の寿命で存在するラジカル対における微細な相互作用ですべて決まってしまう。化学反応をより深く理解するためには、この、ラジカル対のスペクトルを測定し解析することが望まれるが、通常の分光学では、対を作っているラジカルを遊離のラジカルと区別して測定することは不可能である。本研究では、新たに考案したCIDNP検出ESR法を用いて、ラジカル対のESRスペクトルに相当するSNPスペクトルと遊離ラジカルのESRスペクトルに相当するDNPを分離観測することを目的とする。更に、それを時間分解して、ラジカル対および遊離ラジカルそれぞれの時間発展を追跡できるように発展させることを試みる。 多くの系について研究したが、ジクロロベンゾキノンの水素引き抜き反応における中間体について測定したCIDNP検出ESRスペクトルを例としてとりあげる。ラジカル対のスペクトルに相当するSNPスペクトルと、遊離ラジカルのスペクトルに相当するDNPスペクトルそれぞれのスペクトルの位相、およびスペクトル形状を理論的にシミュレートすることによって、ラジカル対を構成しているヒドロキシベンゾキノンと遊離のヒドロキシベンゾキノンとは異ることが結論された。通常の時間分解ESR法では、時間分解能の点から遊離ラジカルのスペクトルしか求めることはできないが、本研究で新しく開発した方法によってはじめてラジカル対を構成しているラジカルを捕えることができたことは意義深い。更に、SNPスペクトルのバンド幅から、ラジカル対の寿命が20ナノ秒であることがわかった。ラジカル対の寿命に関しては、昔から大体ナノ秒のオーダーであるとは言われてきたが、実験的に寿命が求まったのははじめてである。
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