反射型高速電子回折法(RHEED)は、現在、固体の表面構造解析にとって不可欠の手段である。本研究では、電子の反粒子である陽電子を利用した反射型高速陽電子回折(Reflection HighEnergy Positron Diffraction:RHEPD)測定装置を世界で最初に試作し、RHEPDがRHEEDと比較して、表面構造解析能力が格段にすぐれていることを定証することを目的とした。 平成3年度には、反射型高速陽電子回折測定部の真空関係の整備、陽電子の高輝度化、陽電子ビームの50keVまでの加速部の整備を行った。 平成4年度には、RHEPD超高真空容器の10^<-10>torr以下の真空度を達成し、これを維持するとともに、排気時間の短縮をはかった。タングステンとシリコンから成る新しい方式の陽電子減速材を開発し、それを利用して効率を落さない陽電子ビームの高輝度化に成功した。RHEPD試料チェンバーを50kVの高電圧にフロートさせることに成功した。以上の開発により、RHEPD主要部の開発が完了した。回折ビームの2次元計測用のコンピュータプログラムを開発し、リアルタイムでモニター画面に2次元蓄積データを表示することを可能とした。 試料の高精度回転機構を作成し、回転磁気スケールで、0.2ミリラジアンの精度で試料を設定することに成功した。トータル・システムとして、RHEPDパターンを、陽電子の入射エネルギーおよび入射角度の関数として測定することが可能となった。RHEPDの最初の応用例として、セレンをMBEで積んだGaAs(100)面での測定を実施した。 現在、統計精度の低いデーダであるが、2×1構造が観察されており、今後、長時間の計測を続行することにより、世界で最初のRHEPDの高精度データの取得に努力していく予定である。
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