研究概要 |
昨年度に確立したカソード防食最適設計の基本的手法を,本年度は実際の複雑な構造物に適用し易いように様々な解析手法を開発した.この開発に際し本補助金で購入したハードディスク,トランシーバおよびストリーマを利用した. 1.多くの細長い部材で構成された複雑な構造物の腐食解析は通常の3次元境界要素法では膨大な計算量のために不可能となることを指摘し,この問題を解決するために線条要素による近似解を利用する効率的3次元境界要素法を開発した(機論A,58巻p.1234). 2.数千本のステンレスパイプが真鍮製の管板に連結されている熱交換器の腐食解析を行うことのできる境界要素法を開発した.すなわち,まず1本のステンレスパイプとそれと接している真鍮管板の一部から構成されるユニットの電位対電流関係を境界要素法により解析し,つぎにこの関係をマクロな分極特性として熱交換器全体を境界要素解析するという方法を考案し,通常の方法では不可能な程複雑なこの種の構造物の腐食解析を可能にした(機講論,No.920-72,p.73). 3.分極特性が未知の場合に腐食媒質表面の数少ない点における電位の測定値から腐食媒質底の金属表面上のガルバニック腐食速度を推定する逆解析手法を検討し,この逆問題は悪条件となるため通常の方法では妥当な解が得られないことを示し,これを解決するためにファジー理論を応用してあいまいな情報を利用する方法を提案した(機講論,No.920-72,p.75). 4.防食ペイントを施した地中埋設パイプライン等の保守にとって重要なペイント欠陥の同定を,構造物に電流を流して腐食媒体表面の電位分布を測定しその値を入力として境界要素法により逆問題を解くことにより行う方法を開発し,モデル実験を行ってその方法の有効性を実証した(機論A,58巻p.1508,Proc.7th Int.Cong.Exp.Mech.).
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