研究概要 |
1.焦点型プローブ付探触子の開発:後方散乱波によるクリープ疲労損傷材の劣化評価を行うにあたり,超音波が特定の場所に焦点を結ぶようプローブ付探触子を新たに開発した。材料の劣化評価実験に供したところ,従来型の探触子に比べて顕著な改善は見られず,測定精度の向上のためには,むしろ後述の測定系の改善が必要であることがわかった。 2.超音波測定システムの開発:ワークステーションとパルサレシーバ,ディジタルオシロスコープからなる超音波測定システムを新たに開発した。ワークステーションの活用によってフーリエ変換のような高度の計算を高速で行うことが可能となり,実時間処理が実現された。また,新たにDCソレソイドを利用した押し付け力制御装置を開発し,測定精度が大幅に改善された。 3.クリープ疲労損傷材の作成:寿命率が25〜100%の間のクリープ疲労試験片を実験により作成し,損傷模擬材とした。材質は中圧ロータ材として用いられているCr-Mo-V鍛鋼である。 4.逆間題手法のための損傷度評価手法の開発:損傷度評価手法として従来の減衰定数法に加えて,新たに2種類の方法を開発した。ノイズエネルギ法は,後方散乱波のパワースペクトルの積分を適切な周波数領域でとり,無次元化したものである。重み付ノイズエネルギ法は,さらに第一エコーのパワースペクトルにも着目して積分し,無次元化したものである。 5.損傷度評価測定結果:新たに提案した重み付きノイズエネルギ法は,積分する周波数範囲の影響を受けないという大きなメリットがあることがわかった。また2種類のノイズエネルギ法は,従来の減衰定数による評価よりも劣化評価の可能性が高いことを示した。
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