乱流場に予混合されていない二つの反応性物質が投入された場合、化学反応は乱流混合により複雑に変形される界面を通して分子拡散により進行する。この化学反応を伴う乱流混合の問題は化学反応器や燃焼器の中の反応速度の正確な評価や制御に関する工学的な問題、あるいは、自動車排気ガス等の大気拡散の予測と制御に関する環境工学の問題と結びつき、その解明が切望されている。これらの反応乱流の問題を工学的に解決する場合には、反応物質の乱流拡散現象、特に、乱流混合と化学反応の相互効果を解明し、これをモデル化することが重要である。しかし、これを行う場合、反応物質の拡散方程式の中に現れる乱流物質フラックスと反応物質の瞬間濃度の積で表される反応項を正確に評価することが重要であり、そのためには、乱流の最小スケールであるコルモゴロフの空間・時間スケールよりも小さな分解能で反応物質の瞬間濃度と速度の同時測定をおこなうことが必要になる。そこで、本研究では、この問題を解決するため、拡散方程式中に現れる乱流物質フラックスを正確に評価することを目的として、そのために必要とされる濃度と速度の同時測定技術の開発を目指した。本年度は、初年度の反応の無い乱流場での濃度と速度の同時測定技術の開発に続き、瞬間反応の存在する場での濃度と速度を同時測定する方法を開発した。この反応実験では、水酸化アンモニウムとぎ酸の間の瞬間反応を用いた。反応の無い格子乱流場で測定した濃度フラックスと平均濃度勾配とから計算される乱流拡散係数と反応を伴う乱流場に対しで計算される乱流拡散係数とを比較した結果、従来の研究で用いられてきた勾配拡散型の乱流モデルが反応を伴う乱流場に対しては厳密には成立せず、10%程度の誤差をもつことが明らかになった。
|