本研究は、二次の化学反応を伴う、乱流場の局所の一点で二つの反応物質の瞬間濃度と速度をコルモゴロフスケールよりも小さな分解能で測定する技術を波長差を利用したレーザ蛍光法およびレーザードップラー法を用いて開発し、反応物質の乱流拡散機構と混合反応機構を解明することを目的とした。さらに、この結果を用いて、従来の反応乱流に関する乱流モデルの性能を比較し、より正確な実用化モデルの構築のための知見を与えることをめざした。 本年度は、本研究の最終年度であり、これまでに確立したレーザ蛍光法とレーザ・ドップラー法による濃度と速度の同時測定技術を用いて二次の化学反応を伴う液相の格子乱流場の乱流濃度フラクッスの直接測定を繰り返し、モデル化に役立つためのより正確なデータを蓄積した。特に、これまでの測定により、反応乱流場に対しては、乱流拡散係数を用いた勾配拡散型のモデルが成立しないことが明らかになったので、これに代わる乱流の直接数値計算法(DNS)を開発し、その適用性を明らかにした。このDNSによる計算結果は本研究で得た液相の反応乱流場での濃度統計量をよく説明し、液相と気相の反応乱流場での分子拡散係数の違いの効果等をよく表現することができた。また、従来の反応乱流場での濃度変動相関項に対するクロージャ・モデルの性能比較を本研究で得られた実測値を用いて行い、既存のクロージャ・モデルの問題点を明らかにした。その結果、3Eモデルと呼ばれるクロージャ・モデルが現時点では定量的な面において最も優れたモデルであることが明らかになった。
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