研究概要 |
本研究は,平成2年度文部省科学研究費補助金(一般C)の研究課題「NC工作機械用サーボスピンドルの2相PLL制御に関する研究」を発展させ,実用化を図ろうとするものである.本研究の応用としては,例えばNC同期式歯車研削盤を挙げることができるが,現在実用となっているものは,工具最高回転速度の制限から加工能率が極端に低い.そこで,本研究では,最高回転速度を従来の5倍という高い値に設定し,研究代表者の提案になる2相型PLLにより2つの軸の間で超高速の同期回転を行うシステムを開発した. 本年度は主に,高速回転サーボスピンドルの機構部の調整,スピンドルを含めた超高速同期システムの動特性のコンピュータシミュレーション,および実研削実験を行ったが,工具軸サーボスピンドルについては12,000rpm以上の安定した高速回転が得られることが確認された.2相型PLL自身は,昨年の評価により,低速域から超高速域まで極めて優れた動特性を有していることがすでに実証されているが,システム全体を評価するためには,機械的な機構部の動特性をも考慮したシミュレーションが必要である.そこで,本研究の研究費で購入したコンピュータを用いて,システム全体の動的挙動のシミュレーションを行った結果,上述の高速回転においても極めて高精度な同期回転が保たれることが理論的に明らかとなった.最後に,本同期システムを搭載した簡易な歯車研削盤を試作して歯車研削の実験を行った.実験の結果,開発した超高速同期システムは十分な精度で同期回転し,従来の同期システムでは実現できなかった極めて小さなピッチ誤差の歯車が加工された.しかし,本研究は超高速NC同期システムの開発を目的とし,歯車研削盤本体は手作りの簡易なものであったため,機械的剛性が低く重研削における挙動が実験できなかったので,次期において重研削の実験を行いたい.
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