本研究では、超電導体と永久磁石の間に働く反発力を用い、真空中で小型の物体を浮上しながら搬送する装置の開発を行っている。この装置の応用として、真空連結した超清浄半導体プロセス内での搬送装置などを考え、半導体微細加工で作る超小型の浮上装置を用いることで、マイクロマシンにおける摩擦の問題と接触面からの発塵やガス放出の問題の抜本的解決を図っている。計画に従い研究を行い、昨年度は、マイスナ効果による浮上型搬送機構モデルの製作を行った。更に今年度は以下の結果を得た。 (1)浮上型X-Y2方向搬送機構の製作と性能評価: 超電導体として、イットリウム系の焼結バルク材を用いた。その上に駆動電極として、ポリイミドの絶縁膜上に銅フィルムを圧延し、それをフォトリソグラフィーとエッチングで180μmピッチの帯状に加工したものを2枚、電極が互いに直交するように重ねた。スライダー(浮上して動く部分)は、希土類磁石の粉末をエポキシ樹脂で固めたボンド磁石(1mm立方)を4つ、3mm角の銅薄板に貼り付けたものを用いた。超電導体を冷やす冷却系を付加し、真空容器内で実験を行った。最小500〜65mAの電流でスライダーを動かし、ループや階段状など任意の二次元的軌跡を実現した。700mAでの瞬間最大速度は33mm/sだった。1ステップ(180μm)動かすときのステップ応答時間は20msであった。 (2)応用の検討: 上記の結果より、本装置は例えば半導体製造用の真空装置内でのウェーハの搬送装置に応用するのに十分な基本性能を満足することが分かった。
|