研究概要 |
磁気記録の分野では,書き込まれた記録を,より高速に読み出そうという要求があり,磁気ヘッドの動作周波数が次第に高くなっている.そのため,磁気ヘッド材料として開発される軟磁性薄膜では,高い周波数での透磁率の評価が必要となってきた.また,記録密度の高密度化のため,記録媒体の高保磁力化,薄膜化が進んでおり,ヘッド材料は飽和磁化(B_s)の高い材料が要求されている. 今年度は,一般に広く用いられている8の字コイル法で透磁率を測定し,昨年のRFインピーダンスメータと平板コイルとを用いて測定した透磁率と比較した.その結果,両者の測定結果はほぼ一致し,RFインピーダンスメータと平板コイルを用いた透磁率の測定法は,超高周波帯の実効透磁率の測定法として有効であることが分かった. また,材料では高飽和磁化,低保磁力と高い熱安定性を持つFe/CoZr多層膜のCoZrにFeを添加することにより,飽和磁歪定数を10^<-7>台とすることができた.即ち,ヘッド材料として要求される高飽和磁化,低保磁力,低磁歪という磁気特性を満たし,熱安定性の良い材料を開発することに成功した.Fe/Fe_<38.9>Co_<40.1>Zr_<21>多層膜は飽和磁化が約2T,保磁力は40A/m,磁歪定数1×10^<-6>以下で,100MHzの透磁率は約2800である.この多層膜の透磁率はRFインピーダンスメータを用いて測定し,200MHzまでほぼ一定であった.透磁率の低下する周波数は,自然共鳴周波数よりも低く,また渦電流損失の影響し始める周波数より少し低いことが分かった.また,2800という透磁率は,一斉回転モードにより見積もられる透磁率(4πM_s/H_k)よりも低いことを考えあわせると,異方性分散の影響を考慮する必要があると考えられる。
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