研究概要 |
正イオン源に比べて負イオン源は開発が非常に遅れており、従って、高性能で簡便な負イオン生成技術の発展が、世界的に強く求められている。その要請に応えるべく、全く新しい負イオン源を設計試作すると共に、色々な条件下で、その性能を調べた。3年間の成果などを要約すると、次の通りである。(1)イオン生成部が1cm^3以下の小型軽量にも拘わらず、粉末試料(NaHなど)を背後から電子衝撃するために、負イオンの全放射電流値が10^<-5>〜10^<-8>Aと大きく、(2)全放射電流密度は10^<-4>〜10^<-7>A/cm^2となり、(3)イオン収率(衝撃電子1コ当りの負イオンの収率)は10^<-2>〜10^<-5>と高く、(4)今迄にH^-,D^-,Li^-,Na^-など、電子親和力が1eV以下の原子については負イオン化が容易なことを実証しており、また、(5)粉末試料(例えばLiH)をAr^+で衝撃しても同様にLi^-が得られること、又、(6)CaH_2粉末は唯単に加熱(800〜900K)するのみでも、H^-が生成されることも見出している。一方、(7)電子衝撃中に酸素ガスを導入しても、NaHなどからのH^-は不変であるが、NaFからのNa^-やF^-は増大することなどを明らかにし、また、(8)H_2ガスを導入してもH^-は増大しないことから、NaHやLiHからH^-が直接生成されることをつきとめている。また、(9)NaH等の電子衝撃によりH^+も容易に生成されることを実証し、(10)H^±の生成量と衝撃電子電圧との相関性について実験式を確立し、現在、その理論式の創案を進めている。 以上の研究成果は、英文印刷発表7件、口頭発表18件(国際会議の4件を含む)の形で公表されており、また、詳細は約120頁の研究成果報告書に載録されている。
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