研究概要 |
平成3年度は、1)複合多重要素プロセッサにおいて並列処理管理を行なう管理プロセッサが実行する並列処理管理カ-ネルのア-キテクチャの検討、2)並列処理管理カ-ネルで採用する新しい負荷分散手法の検討と評価、3)並列処理管理カ-ネルを実行するのに適した管理プロセッサのメカニズムの検討を行なった。1)並列処理管理カ-ネルは、いわゆるオペレ-ティングシステムの核に相当するが,特に負荷分散とスケジュ-リングに重点を置いているのが特徴である。負荷分散処理の一部である動的負荷分割を担い,並列度等による分割の判断をして,過剰な並列性を抑制し,通信量を低減させ、スケジュ-リングでは,ヒ-プメモリ残量や並列度に応じた動的な優先度,そして,実行開始猶予時間を導入する。評価を行なった結果,並列性が要素プロセッサ数を大きく上回る場合は動的負荷分割が,それほど大きく上回らない場合は静的負荷分割が,それぞれ有効であり,両者を複合させるのが最も有効であることがわかった。2)次に、より自由度の高い負荷分散戦略の提案とその自動付加の試みを示した。まず,「ゴ-ル」と「デ-タ」両方の配置を指定可能とし,「関連のある既存のデ-タが置かれているPE(要素プロセッサ)と同じPE」を戦略として用意することを提案した。そして、実行に沿った「履歴」を保持して,負荷分散戦略の最適化に必要な情報を集めるプロファイラを設計し,ワ-クステ-ション上に試作した処理系で定量的な評価を行ない,本手法の有効性を示した。3)最後に、レジスタウィンドウの管理アルゴリズムを工夫することによって,コンテクストスイッチを高速化する手法を提案した。本手法では,レジスタ上に異なるスレッドのウィンドウが混在するのを許すことによって,コンテクストスイッチの際に,全てのレジスタを退避/復帰する必要をなくした。この手法の評価は今後の課題である。
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