画像データベースシステムでは、視覚的な情報を大量に蓄積、管理すると同時に、利用者に対しそのアプリケーションに適した視覚的なインタフェースを提供することで情報を効率良く提供することが期待される。昨年度は特定のアプリケーション(水墨画の検索)を対象とした検索インタフェースについて検討を行い、明暗強調による画像オブジェクトの抽出とその空間配置情報の類似性による画像の内容検索を実装し、本研究の有効性を確認した。本年度は、画像データベースの機能を拡張すべく、一般画像からオブジェクトを抽出し画像内におけるオブジェクトの空間的な配置関係を把握する手法を確立した。即ち、二次平面で表現される画像の空間配置を人間が認識する場合、視覚系の特性に依存した複雑な処理機構により認識される。本研究では、この視覚系のモでル化を行い、画像に対する階層的モジュール構成の処理機構を構築した。さらにこの処理機械を用いて、データ入力段階において一般画像からのオブジェクトとその空間配置を抽出することで、利用者からの柔軟な検索を可能とする方式を開発した。実際に一般画像として大規模衛星画像を対象としてデータベースを構築し、雲、海岸線、陸地、海面等をオブジェクトとし、その配置情報をデータベースの属性に加えたシステムを実現した。このシステム上では、問合せをグラフ構造で記述することによりオブジェクトの空間配置の類似性に基づく画像の内容検索を実現し、画像中のオブジェクトまたは得られたオブジェクトの形状・空間配置等に関する情報を統合的に利用して(例えば、雲海の状態とその時の陸地の配置)、多量のデータの中から類似の衛星画像(例えば、快晴の画像)の検索を行うことを可能とした。本研究において確立した視覚系モデルによる一般画像からのオブジェクト抽出方式と空間配置情報による検索方式の有効性を確認することが出来た。
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