研究概要 |
本年度は,吸収層用に開発した新素材である金属添加半導体超薄膜の光学的性質の詳しい分析と,これを用いたLAMIPOLの設計・試作・評価を中心に研究を進めた.以下に主な成果を示す. 1.吸収層の評価 半導体(ゲルマニウムあるいはシリコン)に金属(ステンレス)を添加した薄膜の複素誘電率の波長依存性を明らかにした.金属の添加量増加につれ,長波長領域で複素誘電率の虚部が増加し,これにより短波長なら長波長域にわたる高性能化が可能になることが分かった.一方,従来吸収層に用いられてきた純粋ゲルマニウム膜は透明層との付着力が小さく,加工時の破損の原因になっていた.本研究で開発した金属添加膜は,透明層との付着力が従来より一桁近く大きく,この点でも実用上の問題が解決された. 2.設計と試作 吸収層の光学定数評価結果に基づいた設計の結果,可視から赤外まで,性能指数が300以上であり,しかも素子長を従来の3分の一以下にできることが分かった.これを基に,ゲルマニウムに10%程度のステンレスを添加した組成の吸収層を有する素子を作製した.吸収層6nm,透明石英層0.8μmを交互に計100層,手動により積層し,これを光路長10〜30μmに加工した.従来では特性の劣化が大きかった波長0.98μmにおいて,消光比50dB以上挿入損失0.6dBの高特性を得た.さらに波長が0.78,0.85,0.98,1.3,1.55μmにおいて測定したところ,予想通りの高性能を示していることが分かった.尚,ステンレスのみで吸収層を構成した場合の特性を試算した結果,1μm以上の波長で高い消光比を有することが分かった.これは,はんだ付けや高出力レーザ用途にも耐えられるLAMIPOLが可能であることを意味し,広い応用を期待できることが分かった.
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