研究概要 |
本研究の目的は、結晶格子と走査型トンネル顕微鏡(scanning tunnelingmicroscope,STM)を用いることにより、結晶格子を基準とした2次元測長を行うことにある。そのために、研究者らは、トンネルユニットを2個有するSTMを作製した。これにより、一方のトンネルユニットで任意の試料を、もう一方で基準となる結晶格子を観察することが可能となった。現在、この測長方法の精度を検証する目的で、2個のトンネルユニットで黒鉛結晶を同時に観察し、得られる像の一致度を調べている。現在、約150ナノメートルの測定範囲で、99.98±0.033%の一致を確認している。現在は、絶対精度の検証は行っていないが、高い再現性と一致の高さから、良い絶対精度が得られることが期待される。結晶の周期性をソフトウエアで抽出することにも成功しており、近い将来、数μm程度の大きさの試料を結晶格子を基準として測定できる、自動化されたシステムの実現が可能となると考えられる。比較測長の研究と並行して、結晶格子を基準とした位置決め機構の開発も行った。この研究では、結晶表面の原子オーダの傾きを求めるために結晶を固定したxyステージに数10pmの微少なディザ振動を加え、ロックイン技術を用いた。これにより、結晶表面の微分像を得ることが可能となった。微分像のゼロ値は結晶像の凸部もしくは凹部に相当するため、微分値をxyスキャナに帰還させることによって結晶格子を基準とした歩進動作や、結晶中の原子1個と探針を長時間位置決めさせ続けることに成功した。
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