研究分担者 |
池崎 秀和 アンリツ(株)研究所, 第3研究部, 研究員
林 健司 鹿児島大学, 工学部, 助教授 (50202263)
荒木 啓二郎 九州大学, 工学部, 助教授 (40117057)
都甲 潔 九州大学, 工学部, 助教授 (50136529)
末崎 幸生 佐賀医科大学, 教授 (80069484)
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研究概要 |
本研究では,申請設備備品のラングミューア・プロジェクト膜作製装置を用いて,配向性が優れた脂質膜(LB膜)を貼り,この電極の特性を調べた。脂質材料としてリン酸ジヘキサデシルを用い,以下の事実を明らかにした。 1)膜の層数5以上の層をもつLB膜では,膜抵抗や膜電位は層数への依存性は見られなかった。膜抵抗も数GΩ・cm^2とかなり高く,よく知られた黒膜(BLM)と同程度であった。水溶液中での安定性もかなり良好であった。 2)5種類の味物質に対する膜電位の応答は明瞭に異なっており,この結果から,5つの味をLB膜で識別できうることがわかった。 3)応答の閾値も,苦味や酸味物質では約1μM,塩味物質では約0.1mM,甘味物質では約1mM,うま味物質では10μMであり,これは生体系よりもかなり低い濃度であった。つまり,LB膜を受容部に用いた味覚センサは,人よりも高い感度を持ちうることが示された。 4)非電解質である甘味物質に対しても,1mMという低い濃度から応答が得られ,LB膜が非電解質に鋭敏に応答することが示された。 以上の結果から,高配向LB膜は当初の目的どおり,味物質検出に高感度を有することが判明した。さらに本研究では,感覚認識システムのソフト部としてカオスを利用することを試み,カオスアトラクタの変化は各味質に固有であり,味の認識方法として有望であることが示された。また化学物質の中でも,麻酔薬はその作用が可逆的であるという特徴をもつが,麻酔薬についても脂質膜の電気的特性の変化を用いて,その相互作用メカニズムが調べられた。その結果,脂質膜は麻酔薬にも生体系と類似の応答をすることが判明した。 以上のように本研究は,化学感覚を代行する認識システムのハード面・ソフト面の両方において,実用化レベルにほぼ達することができた。
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