研究概要 |
1.自由音場および拡散音場において,等ラウドネスレベル(40phon),最小可聴値,および,頭部伝達関数を測定し,両音場でのレベル差(△L)を求めた.自由音場としては,電子技術総合研究所の大無響室を,拡散音場としては,同じく電子技術総合研究所の不整形残響室を用いた.ただし,拡散音場としての残響室では,床,壁,天井に吸音材を設置し,残響時間を1秒間以下にして使用した.刺激音は,いずれの音場においても1/3オクターブバンドノイズを使用し,その中心周波数は,等ラウンドネスレベルの測定では250Hz,315Hz,500Hz,800Hzの4種類であり,最小可聴値の測定では250Hz〜2kHzの間の10種類である. その結果,次のことが明らかになった.最小可聴値の△Lと頭部伝達関数の△Lは,315Hz,800Hzを除いて非常に良い一致を示した.これより,△Lの測定は,主観的な方法(最小可聴値)と客観的な方法(頭部伝達関数)の,いずれの方法でも得ることができ,自由音場と拡散音場の最小可聴値の差の決定要因の大部分は,外耳道入口の音圧レベルの差であることが示唆された.等ラウドネスレベルに関しては,測定周波数が4種類と少ないため,現在,追加実験を実施している. 2.ラウドネスレベル測定のための心理学的測定法の再検討,および,効率的実験方法開発のための基礎的研究を実施した.現在用いている実験方法である,一対比較の恒常法の基本的性能を押さえるために,時期を隔てて同一被験者が同一条件の実験をした場合の結果の再現性と,「大きい」「小さい」の判断の片寄りが多い場合の結果への影響について検討した. その結果,テスト刺激のレベル変化幅にも依存するが,適切なレベル変化幅の場合でも,主観的等価点に1.5dB程度のばらつきが生ずる可能性があることがわかった.判断の片寄りに関する実験に関しては,サンプル数が少ないために,まだ十分な検討は出来ないが,判断の片寄りを少なくする方向に,結果がバイアスされることが確認できた.
|